・・・それから新らしい潜航艇や水上飛行機も見えないことはなかった。しかしそれ等は××には果なさを感じさせるばかりだった。××は照ったり曇ったりする横須賀軍港を見渡したまま、じっと彼の運命を待ちつづけていた。その間もやはりおのずから甲板のじりじり反・・・ 芥川竜之介 「三つの窓」
・・・それで吾々はこれらの動物を師匠にする必要が起って来るのである。潜航艇のペリスコープは比良目の眼玉の真似である。海翻車の歩行は何となくタンクを想い出させる。ガスマスクを付けた人間の顔は穀象か何かに似ている。今後の戦争科学者はありとあらゆる動物・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・それでわれわれはこれらの動物を師匠にする必要が起こって来るのである。潜航艇のペリスコープは比良目の目玉のまねである。海翻車の歩行はなんとなくタンクを思い出させる。ガスマスクをつけた人間の顔は穀象か何かに似ている。今後の戦争科学者はありとあら・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・それから四十年後の近ごろになって新聞で潜航艇ノーチラスの北極探検に関する記事を読み、パラマウント発声映画ニュースでその出発の光景を見ることになったわけである。この「海底旅行」や「空中旅行」「金星旅行」のようなものが自分の少年時代における科学・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・大波の時には、二三十尋の底でもひどく揺れるが、少しの波ならば、潜航艇にでも乗って、それくらい沈めば、もう動揺は感じなくなります。 波が浜へ打ち上げてから次の波が来るまでの時間は時によっていろいろですが、私が相州の海岸で計ったのでは、波の・・・ 寺田寅彦 「夏の小半日」
・・・独逸が潜航艇を皆引上げそうな事を云ったり、平和を要求したりするような顔をするが、実は、羊の皮を着た狼だ、要心しろ! と云うような事をしきりに云って居ります。 一九一八年十二月二日〔東京市本郷区駒込林町二一 中條葭江宛 ワシントンより・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・飛行機、潜航艇等が戦術の上に著しい変化をもたらしたのもわずかこの十年以来のことである。その他百千の新発明、新機運。それが未曾有の素早さで、あとからあとから人間に押し寄せて来た。その目まぐろしさが戦争突発以後ますます物狂おしく高まって来る。あ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫