天の原かかれる月の輪にこめて別れし人を嘆きもぞする 私たちがこの人生に生きていろいろな人々に触れあうとき、ある人々はその感情の質が大変深くてかつ潤うているのに出会うものである。そして経験によるとこの種の人々は・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
いろいろと材料が不足して来ている台所でも、今日の私たちは心持も体もいくらか潤う食事をこしらえてゆくことに骨おしみしてはいまい。 お米が切符になって、昨今あらゆる人々が訴えていた不安や不便はなくなるであろう。でも、お米は・・・ 宮本百合子 「「うどんくい」」
・・・先生は昔のように細面な、敏感な、眼の潤うた青年で居られた。するとその翌朝故国から来た弟の手紙が、計らずもその先生の断片的な消息を齎して来た、私は生れて始めて、此丈符合した夢を見た。人が呼ぶ偶然の裡には不思議がある。 考えて見れば、大人だ・・・ 宮本百合子 「追慕」
出典:青空文庫