・・・たとえば験潮儀に記録されたある港の潮汐昇降の曲線をレコード盤に刻んでおいてこれを蓄音機にかければ、たぶんかなりな美しい楽音として聞かれるであろう。そうしてその音の音色はその港々で少しずつちがって聞こえるであろう。それでこのようにして「潮汐の・・・ 寺田寅彦 「試験管」
・・・重力分布や垂直線偏差から推測さるるイソスタシーの状態、地殻潮汐や地震伝播の状況から推定さるる弾性分布などがわずかにやや信ずべき条項を与えているに過ぎない。かくのごとく直接観測し得らるべき与件の僅少な問題にたいしては種々の学説や仮説が可能であ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・また、日本海海岸には目立たなくて太平洋岸に顕著な潮汐の現象を表徴する記事もある。 島が生まれるという記事なども、地球物理学的に解釈すると、海底火山の噴出、あるいは地震による海底の隆起によって海中に島が現われあるいは暗礁が露出する現象、あ・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・ 四 験潮旅行 明治三十七年の夏休みに陸中釜石附近の港湾の潮汐を調べに行ったときの話である。塩釜から小さな汽船に乗って美しい女学生の一行と乗合せたが、土用波にひどく揺られてへとへとに酔ってしまって、仙台で買って・・・ 寺田寅彦 「夏」
・・・「もうどうしても、来年は潮汐発電所を全部作ってしまわなければならない。それができれば今度のような場合にもその日のうちに仕事ができるし、ブドリ君が言っている沼ばたけの肥料も降らせられるんだ。」「旱魃だってちっともこわくなくなるからな。・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
出典:青空文庫