・・・じく、文化を名目とはするものゝ、珍らしい、特志の出版家でもないかぎり、出版は、資本主義機構上の企業であり、商業であり、商品であり、また今日の如く、大衆を顧客とするには、著者の趣味如何にかゝわらず、粗製濫造も仕方のないことになるのです。 ・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・ こんな事件が起るよりずっと以前から「博士濫造」という言葉が流行していた。誰が云い出した言葉か知れないが、こういう言葉は誰かが言い出すときっと流行するという性質をはじめから具有した言葉である。それは、既に博士である人達にとっても、また自・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・ だから日本のように非常に短い時間に、非常に沢山のフィルムを、営利会社が有っている映画館の需要を充たすために粗製濫造をする、そういう悲劇は製作者にとってないわけである。それで今までプドフキンでも、エイゼンシュテインでも非常に長い時間かか・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ インフレーションという本来の性質にしたがって出版の場合でも、いい本よりは下らない悪い本が濫造されていたのだから、そのような本の出版状態が整理されて、着実な選択にしたがってそれぞれの分野の著作が出版されるようになったらいいということは、・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
出典:青空文庫