・・・ 東京の闇市場は商人の掛声だけは威勢はいいが、点点とした大阪の闇市場のような迫力はない。 点点としているが、竹ごまのように、一たび糸を巻いて打っ放せば、ウアーンと唸り出すような力だ。 この力が千日前を、心斎橋を、道頓堀を、新世界・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・赤い血が不気味などす黒さにどろっと固まって点点と続いていた。自動車に轢かれたのだなと佐伯は胸を痛くした。犬の声はしのび泣くように蚊細かったが、時どきウーウーと濁った声を絞り上げていた。だらんと伸びて、血まみれの腸がはみだしていた。ピクピク動・・・ 織田作之助 「道」
・・・百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙のようなも・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
出典:青空文庫