・・・と、さながら戦況の不利を目の前に見ているように「何という無念!」という感情で語りすすめている。読者は、専門家の生々した話しぶりにひきいれられ、スリルを刺戟され、われ知らず筆者の感情の流れにひきいれられている。そのようなミッドウェイの敗北をひ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ 第四日 人間が無念無想になる時は、一日の中に可成沢山有る。私の一日中に無念無想になる時には、 朝起きてかおを洗う時……手拭に水をためて顔にあてた切那、 あくびをする時、あついお湯にしずむ時、だるくってそ・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・私達は日本の社会のそれほどに根深い封建性と、それに慣らされた、自分達女性が、愛を守る智慧さえもなく、女の命と言われる愛情への権利さえも放擲して来たことについて、涙をこぼすというよりももっと無念さを感じるのである。 婦人の感情は、現実が苦・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫