・・・彼女から制作と生活とを奪ったナチス・ドイツが無条件降伏したのは一九四五年五月であり、ケーテは、人類史が記念するこのナチス崩壊の日を目撃してから二ヵ月めの一九四五年七月に、ドレスデンで七十八歳の生涯を終った。 ナチスの迫害のうちにすごした・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・この生活苦にあえぎ、悪税・物価高にあえぎながら、日本人の大多数がなお無条件に純然たるブルジョア政党、反民主政党を第一位に支持しているのだとすれば、その政治に対する無知と無判断なならわしは救うにかたいと悲しむにちがいない。日本の民衆が、永年の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・旧軍事支配権力の無条件降伏は、考える葦、働く蟻であったわたしたち日本人民すべてに、人間らしい歩み出しの一歩を約束するものであったことを、確認して、この一年を生きてきたものの、明るいまなざしが街路にみちているだろうか。 率直にいって、日本・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・その一つは、ゴーリキイを無条件にプロレタリア作家の先達であり、父であると見る態度であり、他の一つは、それに対してやや皮肉に、ゴーリキイが偉いというのは成程そうであろう、だが他にもっと偉い作家というのは何人かいる。何もゴーリキイがなくたってや・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・とともに輩出した作家たちの書くものに、無条件に満足してはいない。真にもっと新しいもの、ほんとうに自分たちの毎日の生活を再現したものを熱烈に要求している。だが、作家たちの生活は、果してその大衆的な要求を満すに適当な条件のもとに営まれているであ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 旧支配権力が無条件降伏した一九四五年八月以後、第一回の総選挙が行われ、婦人代議士は三十九名という多数が当選しました。又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・ 一九四五年の無条件降伏によって、一応ファシズム権力は退場したように見えた。けれども日本の社会の実質がどれほどファシズムの無思想性と反歴史性に毒されているかという証拠は、民主主義運動と同時に、一部の人々が精力的に小林多喜二の生涯と文学に・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・については、作者荷風の抱いている今日の人生への態度にまで触れて批評するのを野暮として、荷風の芸のうまさ、たたきこんだ芸が物をいうところを、無条件に買うべしという点に一致したことは、確に特徴的であった。 知性の時代的な不安を云々する人々が・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・私はただ無条件に、生きている事を感謝しました。すべての人をこういう融け合った心持ちで抱きたい、抱かなければすまない、と思いました。私は自分に近い人々を一人一人全身の愛で思い浮かべ、その幸福を真底から祈り、そうしてその幸福のためにありたけの力・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
・・・我々はむしろ姙まれたものに駆使されその要求する所に無条件に服従するほかないのである。 特に芸術のごとき複雑困難な表現手段を必然的に必要とする内生は、非常に高められたものであるとともにまたきわめて繊細なものである。その表現に際して虚偽を絶・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫