・・・るすべての制度および機関はおのずから亡滅して、新たなる制度および機関が発生するであろうとは、レニン自身が主張するところで、実際において、歴史的事実としては、かくのごとき経路が今行なわれつつあるようだ。無産者の独裁政治とは、おそらくかかるもの・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・僕が即今あらん限りの物を抛って、無一文の無産者たる境遇に身を置いたとしても、なお僕には非常に有利な環境のもとに永年かかって植え込まれた知識と思想とがある。外見はいかにも無一文の無産者であろうけれども、僕の内部には現在の生活手段としてすこぶる・・・ 有島武郎 「片信」
・・・「無産階級に祖国なし」げに、資本主義の波に蕩揺されつゝ工場から工場へ、時に、海を越えて、何処と住居を定めぬ人々にとっては、一坪の菜園すら持たないのである。けれど、彼等は、それを、真に不幸とは思わないだろうか? 人間は、到底、理知のみ・・・ 小川未明 「彼等流浪す」
・・・林間学校、キャンプ生活、いずれも理想的なるに相違ないが、それには、費用のかゝることであり、無産者の子供は、加わることができない。要は、適当なる社会政策の施されざるかぎり、学校か、町会などにて容易に実行されることでなければならぬ。 これに・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・私が、曾て、ロシア人の話を聞いて、感奮した如く、もっとそれよりも、赤裸なる、悲痛な人生に直面して、限りない興奮を感じ、筆を剣にして戦わんとする、斯くの如き真実なる無産派の作家を私は、親愛の眼で眺めずにはいられないのであります。――十月十九日・・・ 小川未明 「自分を鞭打つ感激より」
・・・ このことは、無産派の作家についても言い得る。彼等は、無産階級だ、いかに、搾取されつゝあるかを事実について物語る。また、一方に、享楽階級が、華かな生活を送る時分に、一方は、いかに暗黒な、そして、苦痛多き生活を送るかを事件について描写する・・・ 小川未明 「何を作品に求むべきか」
・・・と云う無産階級者の苦悩も、現在の社会制度が現在の儘であるならば、或は免れ難い苦悩であるかも知れぬが、これはその原因を明かにして、これに対応する理想と努力さえあれば、よりよき生活や社会が生れて来ることは確実になった。即ち経済的の苦悩はお互の努・・・ 小川未明 「波の如く去来す」
・・・慈善病院が、三つや四つできたゞけでは、無産階級が救われるとは考えられない。 その日、その日、この社会には、どれ程、貧困のために、悩み、苦しみつゝある者があるであろうか。子供は、飢に泣き、夫妻これがために争い、一家の中は、さながら地獄その・・・ 小川未明 「貧乏線に終始して」
・・・貧しいといって、それは、田舎の百姓の生活であり、また、無産者である多数民衆の生活であります。 邪念なく労働に服する人、無心に地の上で遊んでいる子供、そして、其処に生きているには変りのない、人間も、小羊も、また鶏に至るまで、同じ霊魂を持つ・・・ 小川未明 「民衆芸術の精神」
・・・ドイツ無産政党の組織者であったラサールには倫理学的エッセイ多く、エンゲルスや、シュモルラーには社会主義的倫理思想の論述の少なくないことは周知の如くである。そればかりでなくミルや、シヂウィックや、英国経験学派の系統を引く功利主義の倫理学はほと・・・ 倉田百三 「学生と教養」
出典:青空文庫