・・・ 私たち七千万の人民は、自分たちの毎日の現実のひどい有様と、この無責任で親切気のない政府の不思議な居据り状態とを見較べて、しんから、このままで生活はどうなって行くのだろうかと思いはじめている。 そもそも、インフレーションの原因は厖大・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・親が無責任だなどと書いてきていました。自分を生んだということについてよ。心持がああいう状態だとそういう消極な考え方にきっと陥るのです。富雄さんには小包を送りました。うちの廊下の衣紋竿には国男さんの冬のトンビがかかっていて、いつの夜中にでもそ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・法隆寺の例にむきだされた行政官僚の文化に対する無責任は、二月二十一日の読売にのった高瀬荘太郎文相の私立学校つけとどけ木戸御免説となって再現している。本来は人民の文化の富であるはずのものが、おかしな方法で処置される例は、この間アメリカへわたっ・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・現地の軍当局の信じられないほどの無責任、病兵を餓死にゆだねて追放するおそろしい人命放棄についても記録されはじめた。大岡昇平氏の「俘虜記」そのほかの作品に見られる。ソヴェト同盟に捕虜生活をした人々のなかから、「闘う捕虜」「ソ同盟をかく見る」「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・一定の人生を見てかきながら、それにふさわしい人生の見かたがないという意味を云っている青野氏の言葉は、この一二年間所謂素人文学というものへの無責任な作家の譲歩が、今日に結果した一つの大きい文学上の問題だと思う。 或る作家たちがこの三四年来・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 平和な日本をうちたててゆくということは御都合主義で、あっちの風がふけばそう靡き、こっちの風がふけば、こうなびく無責任さでは実現されない。科学上の真実は、社会の実際にそれが変化してあらわれるからこそ、動かしがたい真実として存在しなければ・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・ ほかからあてがわれた目的に、自分の何かしたい心持をあてがって行くところに、無責任と、自分自身で解決しなければならない煩悶の紛らしがあるのではないでしょうか。そう云う場合、その人は活動して却って純正な意味の心の持ち方に於て低下しまいもの・・・ 宮本百合子 「自分自分の心と云うもの」
・・・自分を死んだものとして無責任に片づけ、而も如何にも儀式ばった形式で英霊の帰還だとか靖国神社への合祀だとか、心からその人の死を哀しむ親や兄弟或いは妻子までを、喪服を着せて動員し、在郷軍人は列をつくり、天皇の親拝と大きく写真まで撮られたその自分・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・民的民主主義という新しい歴史の課題やその文学運動がはじめられたことに懐疑や反撥を感じている人々が、この現象を面白がってグルリからはやしたてたから、『近代文学』のグループのある人たちの議論は、必要以上に無責任なジャーナリズムの上で賑わった。こ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・生の冒険のごとく見えたのは、遊蕩者の気ままな無責任な移り気に過ぎなかった。生の意義への焦燥と見えたのは、虚名と喝采とへの焦燥に過ぎなかった。勇ましい戦士と見えたのは、強剛な意志を欠く所に生ずるだだッ児らしいわがままのゆえに過ぎなかった。私は・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫