・・・ 一方には、一方の事は、全で無関係であった。勝手に雲が飛び、勝手に油虫どもが這い廻っているようであった。 人々は、眼を上げて、世界の出来事を見ると、地獄と極楽との絵を重ねて見るような、混沌さを覚えた。が、眼を、自分の生活に向けると、・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・噂では、けがらわしいリスト調製に無関係ではないと話される作家さえもあった。 アメリカへの戦争準備を強行中の軍事力は専断のかぎりをつくした。情報局でこしらえたジャーナリストと役人との、執筆者リストのようなものを、そのころ偶然みたことがあっ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ きょうの文化上の欲求の一つとして、現代の日本の経済事情と、その経済事情にどう処してゆくかという政治の方法に無関係なものがあるだろうか。主婦が、わずかのひまを見つけて読みたい本は、一般の物価上りで三冊が一冊にされつつある。その一冊にさら・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・文学だけが、それについて無関係だなどということはあり得ない。 各文学研究会は、狭い、睡いディレッタンチズムからとび出さなければならない。文学研究員は大衆を、壁新聞と工場新聞に向って動員し、生産経済計画達成に大衆の自発性を鼓舞する文学的実・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・という声に無関係であり得るということはないのだ。 同時に、一九二八年から九年にかけての、このロシア・プロレタリア作家連盟の標語、大衆の中へ! は、非常に大きい歴史的背景の前にあった。 この一九二九年こそ、ソヴェト同盟に生産拡張の五ヵ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・と云ったマークの生への諦めは、彼の死に無関係ではなかった。彼のその悲しい諦めは何が原因であったろう。 スーザンは自分の心を偽らない生きかたをしているために、マークと自分との間の悲劇をもはっきりと見ていた。それは、彼女の彫刻への熱情である・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・諸生産が統制のもとになされつつあることは、作品をその生産物としてもっている文学の領域にも無関係ではあり得ない。官民一致の体制は、文学の賞の本質にも十分に反映している。このことは、現実生活の中では、文部省の教科書取締りにあらわれた、文学の読み・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・みんながこのことに無関係ではないのですから。 婦人代議士たちは立候補したときなんど繰返して「女は女のために」といったでしょう。わたしたちはこの言葉を少しちがえて考えたいと思います。「女は女のために」というような一段高いところからおためご・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・その形と色と触感との不思議な美しさは彼らには無関係である。彼らはただその壺の値段を見る。その壺で儲けたある骨董屋の事を考える。同様にまた彼らが一人の美女を見る場合にも、この女の容姿に盛られた生命の美しさは彼らには無関係である。彼らはただ肉欲・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・先生が四高から学習院に移り、わずか一年でさらに京都大学に移られたことも、そういう雰囲気と無関係ではあるまい。東京転任に先立つ数か月、四十二年四月に上京せられた際には、井上、元良などの「先生」たちを訪ねていられるし、また井上、元良両先生の方で・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫