・・・坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練工が絶えず働いているが、感服したのはその安全装置である。唸って震えている、巨大なモーターの周囲は油さしやその他にごく必要な部分だけを露出して強い金網で覆ってある。調帯も、・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・元の賃銀率システムには、熟練工と不熟練工、過労な労働と軽い労働との間の差が具体的に区別出来ない欠点があった。所謂平均主義者に向って、スターリンは、生産の主人であるソヴェトのプロレタリアートが、賃銀の新条件、住宅、配給の改良によって、益々階級・・・ 宮本百合子 「反動ジャーナリズムのチェーン・ストア」
・・・最も熟練工の多いワルシャワ鉄道大工場の金属工のなお沢山の者が、地球は円いのか、扁平なのか、動かないのか、それとも太陽の周囲を廻転するのか等とシャポワロフに質問した。バイブルはこれらのことを正確に説明するには何の役にも立たない。その上工業恐慌・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・失業率が増大し労働条件が悪化する社会では次第に自分の教養を活かすような勤め口を見つけることがむずかしくなり、それは自身の書く便利のためにとった選択であると思いこみつつ、実は客観的な力に押されて、最も不熟練工的な厨房での仕事によって賃銀を得な・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・印刷工場などでは、その先そこにつとめようとすれば、未熟練工なみにおとされる。女教員でさえ四十一歳になった女教師は、新しく本任用しない東京都の内規がある。 離婚を要求する女性の理由のなかには、夫の乱れた生活は、妻としての自分に耐えがたいと・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫