・・・全国に十万人も熟練工が不足を告げているという事実は、今日の大問題とされているのである。処々の大工場、実務学校などで熟練工の養成、再教育をしている中には、専門学校出の若い婦人を新たに機械工業のための製図師として再教育している実例もある。臨時工・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・仕事への熟練とその集注力の大さとが、いかにも人間の肉体を通して語られている。こんな微細な作業から大きいこともしてゆく人間の精神への感興が、おのずから湧きおこされて来る。 ヴォルフがいつも自分の撮そうとする対象を愛しているということは、そ・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・ 作家キルションは、工場内の熟練労働者は勿論のこと、門番、のんだくれて同志裁判にかけられた労働者とまで知り合いなはずだ。生産の技術についても、ズブの素人以上の知識をもっているであろう。職場内の一般的気分、五ヵ年計画につれて発生し複雑に発・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そんな命がけの手術をするのに、そこを切れ、あすこを切れと、指図されるような不熟練者が執刀した。手術後、ガーゼのつめかえの方法をいい加減にしたので、膿汁が切開したところから出きらず、内部へ内部へと病毒が侵入して、病勢は退院後悪化した。同志今野・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・二人ながら生活においては未熟練で、感情的で、互に「他人よりわるい」場合が頻出するのですね。私は太郎の遊んでいる姿を眺め、この可愛い小僧の精神の中に、どれ丈この生温い、受身な、姑息な生活気分を打開する力がこもっているかと思います。そしてどうか・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 全国工場災害率をみると、例年の最高は機械器具であって、十一年八月を一〇〇とすると、十四年一四五と災害が飛躍していて、このことは、尨大な数の不熟練工とその中に加わった娘たちの災難とを語っているのだと思う。しかも、怪我したりする年齢がこれ・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・ 職業組合に加盟しているから、不熟練労働者で五十ルーブリ位もらってるものでも、失業保険その他で保護されている。「休みの家」の利用も出来る。若し有料診療を受けなけりゃならない場合は半額だ。おまけに、ソヴェトでは家賃というものが、月給に応・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・あれやこれやで、一九三〇年、五ヵ年計画がやっと第二年目を終ったばかりだのに、ソヴェト同盟では失業がないどころか、まだ十万近い熟練労働者がいるという有様になったのだ。 今はそれでいいとし、然し五ヵ年計画が終って、いろんな仕事が一段落ついた・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・まだ多くの清算すべき分子と技術上の未熟練がある。だが、今年プロ美術展を見た人々よ! 来年を注目しろプロレタリアート解放運動における一歩の進展はきっと諸君の若い画かきをもまた一歩進めずにはいないのだ。〔一九三〇年十二月〕・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
・・・生産単位として男と同じ熟練技術者をつくろうとは決してしない。 あらゆる分野で、男より低廉な賃銀で過労し、母性の重荷を負った不熟練技術者としての婦人を準備しつつある。その社会的な弱点を改正しようとしないで、女は、女は、と女のおくれをせめつ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫