・・・そして、この不幸は母親ばかりの責任ではなく、我もろとも十分に知りつくしている昨今の東京の交通地獄の凄じさに対して、熱意ある解決をしない運輸省の怠慢について、注意を喚起した。 世間の輿論は、不幸な母親由紀子さんに同情を示し、結局、東京検事・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する一人の作家が、今日の現実を見る勉強としてやって見るつもりである。日本文学史全巻を・・・ 宮本百合子 「意味深き今日の日本文学の相貌を」
・・・彼等の俳優としてのそういう熱意が快く感じられると共に、中国の現実そのものの力が、今日国際的な関心の性質を次第に真面目な人間的なリアリスティックなものに変えつつあることを痛感したのである。 ただ残念なことにこの「大地」もアメリカ映画特有の・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・そういう問題をはなすについても、大町さんの正直さ、人間として一番よく生きてゆこうとしている熱意が感じられ、親愛と信頼とを感じた。大町さんは、けっきょく、もっとも責任のある愛情のえらびかたをして生活条件とすれば困難のより多い故大町氏との結婚を・・・ 宮本百合子 「大町米子さんのこと」
・・・自身の敗北の十分な意識の上に立って、その社会的・歴史的要因を作品の中でつきつめようとする熱意を欠いていることである。あらゆる進歩的なインテリゲンツィアと勤労者に、その敗因が全くひとごとではない連帯的な現実の中にあるということを、芸術の息吹に・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・背景をなして、若い人々の生活の満ち漲った熱意と着実な営みとが感じとられたとき、その行進は、感動的なものとなるのである。 若い娘たち、妻たち、そして若い母たちはこれからますます群れを組み、街上を行進する機会を多くもつのだろうが、そういう行・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・を宮本が生きて、これから先何年もそこですごさなければならない見当さえつかない未決にまわった記念のために、ちゃんとした小説に書き上げたいと思う熱意があった。そのために一ヵ月余、継続的に仕事をした。ある部分は数度かき直された。そして「乳房」と題・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・作者は、しかし、人道的であり集団的活動の熱意をもって働いている主人公のありかたについて、もう一つ深めてみてもよかったと思う。主人公の僚友に対する責任感が、自身患者であるその人個人の安静の犠牲によって果されるしかないという療養所内の現実が、も・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・ストライキ委員会は、それだけの熱意で兵営内闘争をやってくれと云い、兵士と従業員は革命的挨拶を交して別れたということも聞いた。 地下鉄、出札と聞いた瞬間、自分は一種の重圧をもって稲妻のようにそれらの闘争を思い起した。あのような顕著なストラ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・カロッサが大戦後のドイツの生活のなかから希望と精神の確乎とした人間成長の可能を見出だそうとした熱意が限界を持ちながらも真面目に伝えられています。はじめて小説らしい小説を読んだから、感銘が新鮮でいつか余程前にジャムの「夜の歌」を読んでもらって・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫