・・・疎開児童は田舎へ行って爆弾からは護られたけれども空腹からは護られませんでした。疎開学童は働く楽しみのために農家を手伝ったのではなくて、そうすれば食物を貰えるから、その目的のために働きました。それでも疎開児童が帰って来たときに、親は涙をこぼす・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ここで隊列を敷いていたフランス兵たちが生きながら瞬間に爆弾の土砂に埋められた。 更に一ヤードほど登った前方の草の間に、金の輪でも落ちているように光を放っているものがある。こごんでそれを眺め、私は覚えず息をつめた。 おおこれは一つの小・・・ 宮本百合子 「女靴の跡」
・・・そのための強国間の協力、原子爆弾の禁止、人種的差別の撤廃、マーシャル・プランの廃止、植民地住民の自治原則確立、日独に対する講和促進と占領軍の撤退、中国における民主的連立政権の樹立、タフト・ハートレー法の撤廃、非米委員会活動の廃止、基本産業の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・何しろ原子爆弾さえできた世の中です。天然色の映画さえできております。ですからものを能率的につくるという機械の発展は十九世紀以来驚くべきものなのです。第二次ヨーロッパ大戦ではたくさんの発明がありましたからわかりませんけれども、少くとも第一次ヨ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ 文芸春秋に、「男性への爆弾」という記事があり、山川菊栄、森田たま、河崎なつの諸名流女史が夫々執筆していられる。河崎なつ氏をのぞいて、他の二人、特に山川菊栄女史の文章は面白い。女史は「先ず手近から」男を観察し、女中の留守には自分の洗・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・超階級的と思われてきた自然科学の法則が、支配階級の権力によって使用された場合、そして、その権力が侵略的であったとき、科学の真理は毒ガスとなり、爆弾となり、おそろしい殺人を行いました。地球はまわるといったガリレオ・ガリレイは、宗教裁判にかけら・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 湯川秀樹博士がノーベル賞を受けた日、「わたしは原子爆弾をつくれないし、そういう興味をもっていない」と語った言葉は、世界のまじめな人たちの心に響いた。 南原東大総長がワシントンの会議で、「民族とその文化の独立のためには、世界平和が確・・・ 宮本百合子 「しようがない、だろうか?」
日本の新聞はアメリカの良心的な市民が読んだら怒るだろうほどおく面ない調子で、アメリカに原子爆弾よりも殺リク力を持った、放射線の雲を作ることが発明されたと報じています。建物を破壊しないで人間はセン滅するから原子爆弾よりも有効・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・「また椰子の殻に爆弾を詰めたのが二つ三つあったそうですよ。」「革命党ですね。」 己は大理石の卓の上にあるマッチ立てを引き寄せて、煙草に火を附けて、椅子に腰を掛けた。 暫くしてから、脚長が新聞を卓の上に置いて、退屈らしい顔をしてい・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・噂の原子爆弾というやつかな。」「そうでもないらしいです。何んでも、凄い光線らしい話でしたよ。よく私も知りませんが、――」 負け傾いて来ている大斜面を、再びぐっと刎ね起き返すある一つの見えない力、というものが、もしあるのなら誰しも欲し・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫