・・・その便宜の為にも、曖昧な片仮名はやめて、英語は英語のままにして行った方がよかろうと思う。 先ず本国の愛蘭より却って米国に於て早く認められて今は一部の偶像のように成っている Lord Dunsany に就て書こう。彼の経歴は厨川白村氏・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・山口氏の文章の片仮名が、丹羽氏の小説では平仮名にかかれ、いくらか内面的な記述が加わっているが。 山口一太郎氏の二・二六真相が、どうしてこういう風な形で同時にいくところへもあらわれたのだろう。中島健蔵氏が「世界への反逆」でふれているように・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・ 日本の女から片仮名の手紙が来る。それをフイリッポフによんで貰いに持って来る。女と見れば、しっかりいつまでも手を握ったりして居る。きたない髭面、目くぼみの背低。 フイリッポフ、ドンジュアンと呼ぶ。 前に、シベリアで知り合った・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・桃色ろの半襟 色白、 四つの子供 楠生 ○七つになる姉 やっと覚えた片仮名で クソオ とかく 呼ぶのもクソオさん ○頬っぺた高くふくれて居るが手など細く弱々し。 ○坊や たべるの たべゆの ○カキクケ・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
ユリチャン、コレガオトーサマノ、ノッテイルフネデス。 片仮名でそういう文句をかいた欧州航路の船のエハガキが、五つの私へ父からおくられて来た。父はイギリスへ行くところで、まだ字の読めなかった娘へも最初のたよりを、そのよう・・・ 宮本百合子 「父の手紙」
・・・ 或る別の手帳をあけて見たら、何かに打ち興じた折、誰かから教わったのでしょう、支那音と註して中條精一郎と片仮名のルビを丁寧につけたのがありました。〔一九三七年一月〕 宮本百合子 「父の手帳」
・・・ けれ共皆悲しい事には英語で、私の読める片仮名と平仮名ではなかったので只の一字も感じる事さえ出来なかったけれ共、実にちゃんと並んである字の下に赤や青の線が随分沢山ついて居るのは全く解せない事であった。 まして、切角白くしてある所へゴ・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・……中に、ステパンの会話の力で判断してだろう、片仮名で、「オナツカシキペテロフサマ、ソノゴオカワリモアリマセンカ、ユウベ、マテイタノニキテクダサイマセン、ナゼデスカ、シドイシト、ワタシノココロモシラナイデ。アナタ、ホントニアタシ・・・ 宮本百合子 「街」
・・・チェホフのような態度、モウパッサンの視野、ストリンドベルク、ゲエテ、イプセン、片仮名でない名で見出せば西鶴、近松、近く夏目漱石、皆、それぞれのテムペラメントに従って、女性を愛している。或る者は、幾分当惑げな寛大さと興味深げな観察眼を以て、或・・・ 宮本百合子 「わからないこと」
出典:青空文庫