・・・あのように厳しく、そこから逃げ出せば法律で以て罰せられ、牢屋にまで送られた徴用の勤め先が軍部への思惑だけで、収容力もないほどどっさり徴用工の頭数だけを揃えていることや、そのために宿舎、食糧、勤労そのものさえ、まともに運営されて行かず、日々が・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・――そしてね、あなたは、あんなに永い間牢屋に暮していらしたでしょう? あすこには、決して、あなたに対する絶対の支持というものは存在しなかったのよ。いつだって、二重の、いつでも逃げ腰の親切か、さもなければはぐらかししかなかったのよ。そうでしょ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・それで、今日になって初めて自分達の口を抑えていたものがとれて、なにかというと私どもの手からペンを取上げて牢屋へぶち込んだそういう力はなくなった。今こそ私どもは日本全体が新しい民主的な日本になろうとする喜びの中に全身的に参加して行くという熱情・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・社会主義者、共産主義者といわれて言論の自由をうばわれ牢屋にいれられていた人々です。本気で戦争に反対し、つまり私たちの婦人の幸福を守ろうとしてたたかったのが主として共産主義者であり、共産党であったということは、とくに女にとって忘れられないこと・・・ 宮本百合子 「本当の愛嬌ということ」
・・・ 一たん階下に降りて帝政時代の政治犯人が、檻禁されていた牢屋の模型を見物する。 模型といっても、本物の牢屋の鉄格子、腰かけ、みんなもとの牢屋からとって来たものだ。ほんの一坪位の厚い壁の間に、ボンヤリ、ローソクの光に照らされながら髪の・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫