・・・とくに本年度の悪質大衆課税として批難をうけながらついに国会を通過した物品取引税は、総額二七〇億円の収入を予定されていて、この取引税が時計の修繕にも靴の底なおしにも、映画や芝居をみるときにさえも消費者の負担となってくる。各取引ごとに一パーセン・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・夜になると、商売が単に商売――物品と金銭との交換――とはいえない面白さ、気の張りを持たせる同じ店頭に、今は日常生活の重さ、微かな物懶さ、苦るしさなどが流れている。私が何故そう奇麗でもない昼、夕刻にかけて散歩したかといえば、夜では隠れてしまう・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
・・・一般の買物日と定った日に纏めれば、多くの場合、場所により懸け値を少くよい物品を得られると云う訳なのです。 夜は、時によれば日曜日にかけて、どこか静かな郊外に泊りがけで出かけることもありましょう。どちらにしても、土曜の晩は心置きなく悠くり・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・と入口に立ったが、べったり流し前の簀子に座布団もなしで坐り込んでいる彼女の風体とその辺に引散らかしてある物品を一目見ると、君が泣き出したのも無理なく思えた。石川は上り框に蹲み、「どうなさいました、え? 奥さん」と声を励ました。石・・・ 宮本百合子 「牡丹」
出典:青空文庫