・・・ 独房小唄「……私この前ドストイエフスキーの『死の家の記録』を読んでから、そんな所で長い/\暗い獄舎の生活をしている兄さんが色々に想像され、眠ることも出来ず、本当に読まなければよかったと思っています。」「でも、面・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・伴天連らしきものとして長崎の獄舎に置かれたのである。しかし、長崎の奉行たちは、シロオテを持てあましてしまった。阿蘭陀の通事たちに、シロオテの日本へ渡って来たわけを調べさせたけれど、シロオテの言葉が日本語のようではありながら発音やアクセントの・・・ 太宰治 「地球図」
・・・―― 演説が終ると、獄舎内と外から一斉に、どっと歓声が上がった。 私は何だか涙ぐましい気持になった。数ヶ月の間、私の声帯はほとんど運動する機会がなかった。また同様に鼓膜も、極めて微細な震動しかしなかった。空気――風――と光線とは誰の・・・ 葉山嘉樹 「牢獄の半日」
・・・ 魯迅は十三の年、可愛がってくれていた祖父が獄舎につながれるようなことになってから極度に落魄して、弟作人と一緒に母方の伯父の家にあずけられた。魯迅は「そこの家の虐遇に堪えかねて間もなく作人をそこに残して自分だけ杭州の生家へ帰った」そして・・・ 宮本百合子 「兄と弟」
・・・自分の行為に対する引責――刑に服したことと、経験した獄舎生活の研究とは別のものでありそうに思われるが、堂々たる立場によって発言する人はない。外部からでは役所の記録に表わされたことしか知れない。それ故、女監一巡が熱心を呼び醒したのであった。・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
出典:青空文庫