・・・(発作的玉造の小町と云う人がいます。あの人を代りにつれて行って下さい。 使 年もあなたと同じくらいですか? 小町 ええ、ちょうど同じくらいです。ただ綺麗ではありませんが、――器量などはどうでもかまわないのでしょう? 使 (愛想悪・・・ 芥川竜之介 「二人小町」
・・・も存外誤植がすくない故、手間を略いて、そのまま借用させてもらうと、―― ある日、玉造で拾った客を寺町の無量寺まで送って行くと、門の入口に二列に人が並んでいた。ひょいと中を覗くと、それが本堂まで続いていたので、何と派手な葬式だが、いっ・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ 玉造線の電車通へ出て、寺田町の方へ二人はとぼとぼ歩いて行った。 寺田町を西へ折れて、天王寺西門前を南へ行くと、阿倍野橋だ。 途中、すれ違う電車は一台もなかった。よしんばあっても、娘のそんな服装では乗れなかった。焼跡の寂しい・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・ 文吉は宇平を尋ねて歩いた序に、ふと玉造豊空稲荷の霊験の話を聞いた。どこの誰の親の病気が直ったとか、どこの誰は迷子の居所を知らせて貰ったとか、若い者共が評判し合っていたのである。文吉は九郎右衛門にことわって、翌日行水して身を潔めて、玉造・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫