・・・ 万葉集の時代が過ぎて文学のうえで婦人が活躍した藤原時代が来る。王朝時代の文学は、主として婦人によってつくられたということがいわれている。栄華物語、源氏物語、枕草子、更級日記その他いろいろの女の文学が女性によってかかれた。なかでも紫式部・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・をつけて呼んだバルザックが政治的に正統王朝派であったことは、同じバルザックが「牧師」の中でマルクスの心を打ったほど鋭く現実の資本主義商業の成り立ちを喝破していることと撞着するものでないというのが、バルザックの花車を押し出した一部のプロレタリ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・女流文学の隆盛期と云われた王朝時代、一般の婦人の社会的な地位は、不安で低いものでした。その中から、こういう小説を書いた。そして紫式部が書いた小説にはなかなか立派な描写があるし、同時に彼女の生きた時代の女のはかない生き方、大変に風流のように、・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・林房雄氏等が、抽象的情熱としての万葉精神、王朝精神などと敢て云い得る根拠は全くこういう事情にあるのである。 三 例えば「さび」について 近頃は一方に万葉、王朝時代の精神ということが特殊な根拠の上に云われているけ・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・万葉、王朝時代の精神が今日の生活に求められている。それらのことについての感想は後にふれるとして、世間普通のものの目から見ると、そのような一部の作家たちの今日の姿こそ、まことに日本的なるものの顕著な実例として、ことの成りゆきをうち眺めざるを得・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・私が源氏物語を読んだのは、与謝野さんの訳でではあったが、あの絢爛な王朝文学の、一種違った世界の物語りや、優に艷めかしい插画などが、子供の頭に余程深く印象されたものらしい。そしてそれに動かされて書いたのがこの「錦木」だったのである。その「錦木・・・ 宮本百合子 「昔の思い出」
・・・この一冊の本を精読すれば、私たちは他の王朝文学の全般をよむ場合に先ず知っていなければならない当時の社会事情、衣食住、女性の生活、文学の系列をも学ぶことが出来る。清少納言の婦人及び芸術家としての生活に対して、著者は穏かな表現のうちに実感をこめ・・・ 宮本百合子 「若い世代のための日本古典研究」
・・・ 日本文学が、万葉集時代、源氏、枕草子その他の王朝文学から「和泉式部日記」「更級日記」「十六夜日記」の母としての女性、徳川時代の「女大学」の中の女の戒律がその反面に近松門左衛門の作品に幾多の女の悶えの姿を持っていることは、意味深い反省を・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・この時代として特に注目せらるべき点は、武家の権力政治が数世紀にわたって行なわれた後に、なおこのような王朝時代の政治理想が依然として説かれている点である。これは最初に言及したルネッサンスとしての意義にも関係しているであろう。同じ兼良が将軍義尚・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・がこの初期のガンダーラの美術は、三世紀の中ごろクシャーナ王朝の滅亡とともにいったん中絶し、一世紀余を経て、四世紀の末葉にキダーラの率いるクシャーナ族がガンダーラ地方に勢力を得るに及んで、今度は塑像を主とする美術として再興し、初期よりずっと優・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫