・・・近代の理性或は理念の操作は日本文学の現実の創作とくいちがうものだという「既存の通念」に疑いをさしはさんでよいのだと思う。「歯車の空転」のなかで、伊藤整は「この時代に生きる作家の運命というものを」「作家はその不調和を外界と人間の衝動の中に・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・それは理論的に言えば一切のものの根源たる一つの理念である。この理念の代表者或いは象徴であるがゆえに神聖な権威があったのである。この重大な契機は、思想が急激に発達した飛鳥寧楽時代においても失われなかった。天皇は、宇宙を支配せる「道」の代表者或・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・の告白として表現しているのである。 美への奉仕はすなわち人類への奉仕である。言い換えれば、芸術のための芸術と人類のための芸術とは別物でない。この考えを深く裏づけるものは「人類」の理念であるが、しかし岸田君はこの理念について詳しく語っては・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫