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・・・思っても見よ太古の動物が太古そのままの姿で、いまもなお悠然とこの日本の谷川に棲息し繁殖し、また静かにものを思いつつある様は、これぞまさしく神ながら、万古不易の豊葦原瑞穂国、かの高志の八岐の遠呂智、または稲羽の兎の皮を剥ぎし和邇なるもの、すべ・・・
太宰治
「黄村先生言行録」
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・・・豊葦原の瑞穂の国の瑞穂の波の中にいて、それでなかなか容易には米が食われないのである。どこかで何かが間違っている証拠である。しかしどこで何がどう間違っているかがなかなか容易に分らない問題であろう。 北上川の蛇行水路の右岸の平野に低湿の沼沢・・・
寺田寅彦
「札幌まで」