・・・そのときの彼女たちは、断髪に日の丸はちまきをしめて、日本の誇る産業戦士であった――寮でしらみにくわれながらも。彼女たちの働く姿は新聞に映画にうつされた。あなたがたの双肩に日本の勝利はゆだねられています、第一線の花形です、というほめ言葉を、そ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・紡織は、イギリスで蒸気の力で紡績機械を運転することを発見して産業革命があって後、繊維産業というものが世界中ですっかり変ってしまった。 今日の紡績工場は耳が聾になるほどうるさい。何千という錘が絶え間なく廻っている。そこに十四五から、七八く・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・間にたって利益を吸いとる者のない生産のための生産をやっているのだから、根本は一般勤労者の生活水準を高めるのが目的だ。産業別の生産組合は、或る一つの企業をやるとき、必ず天から勤労者福祉資金何割というものを予算に加えて仕事をはじめる。 五箇・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・同時に、都会の工場が、何故こうも平和産業に転換することがのろいのであろう。これ迄は変則なインフレ景気で工員たちも遊んで暮せる金があったかもしれないが、現在、人々は遊んで餓えたいか、真面目に働いて安心して食いたいか、二つに一つの答えに迫られて・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・政府は、モラトリアムまで布きながら、今だに、軍需産業への補償というようなことを云っている。「欠損をしている」のは、帳面づらだけだと、誰にも分りきった軍需生産者、つまるところは、戦争で儲けつくした者たちに、何故か幣原内閣は、なおも追銭をやらな・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・禁止、人種的差別の撤廃、マーシャル・プランの廃止、植民地住民の自治原則確立、日独に対する講和促進と占領軍の撤退、中国における民主的連立政権の樹立、タフト・ハートレー法の撤廃、非米委員会活動の廃止、基本産業の国有化と時給一ドル最低賃銀制の確立・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・ 一九三〇年の冬、世界じゅうの注視の的となったソヴェト同盟内の重要な地位にある技師、学者、役人等による大反革命陰謀、産業党の例を見ても、プロレタリア階級の技術家がどんなに大事かは明瞭だ。 ロシア共産党は大会において、生産組合、労働組・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・いずれの場合でも、ただ応募した作家たちが一まとめに派遣されただけで、各々の作家が、これまでどの産業に一番接近していたか、どんな社会的労働があるのか? それらの経験と行くさきの新興産業とはどんな関係にあるかというような詳細に亙って、作家と目的・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・交通産業上に歴史的なばかりでなく、これまで日本にあったストライキから見ても、溌溂とした闘争力、計画性、科学的なやりかたで、広い影響を与えた。 信州でも、地下鉄のストライキとその婦人も勇敢に闘ったやりかたについては話に花が咲いたのであった・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・そうして大きい、よく組織された国家の、すみずみまで行き届いた秩序があり、権力の強い支配者があり、豊富な産業がある。骨までも文化が徹っている。東海岸の国土、たとえばモザンビクの海岸においても状態は同じであった。 十五世紀から十七世紀へかけ・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫