・・・ 十日 髪を洗う 十一日 風の強い、始めての蝉の声 夏らしい日 七月三十一日 福井に来 九月一日 大地震 四日 四時五十分出発 五日 午後九時半 田端 六日 国男より 自筆の手紙・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・夜になると、田端の汽車の汽笛が、つい間近にきこえて来た。「久しぶりで、たっぷり炭をおこしてあげたいけれど、あんまりのぞみがないわ」「いいさ。寒けりゃいくらでも着られるだけ結構なもんだ」 ペンをもったなり口を利いていた重吉は、又つ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 順当に行けば午前九時十五分に着くべき列車は十二時間延着で、午後九時過ぎ、やっと田端まで来た。私共の列車が、始めて川口、赤羽間の鉄橋を通過した。その日から、大宮までであった終点が、幸い日暮里までのびたのであった。厳しい警戒の間を事なく家・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫