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・・・のものは皆あやぶんで居る。 もうまるで大人になった体をもてあました様に柱によっかからせてついこないだから着始めた袖の着物の両袂に手を突込んで突袖をして居る様子は「にわか」の由良さんを十倍したほど下品に滑稽で間抜けに見えた。 千世子が・・・
宮本百合子
「千世子(二)」
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・・・ 宮崎が舟は廻り廻って、丹後の由良の港に来た。ここには石浦というところに大きい邸を構えて、田畑に米麦を植えさせ、山では猟をさせ、海では漁をさせ、蚕飼をさせ、機織をさせ、金物、陶物、木の器、何から何まで、それぞれの職人を使って造らせる山椒・・・
森鴎外
「山椒大夫」