・・・の特徴は、作家の大衆に対する文化的指導性を自身の社会性についての省察ぬきに自認している点、及び、所謂俚耳に入り易き表現ということを、便宜的に大衆的という云い方でとりあげていて、従来の通俗文学との間に、画すべき一線のありやなしやを漠とさせてい・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・それ故、国民文学の翹望は、近代の日本文学に一つの時期を画す性質をもっているということも一応肯定されるが、社会の歴史のいかなる高まりもそれ以前の数々の必然からもたらされるとおり、文学におけるその声が或る画期的な意味をもっているという一つの事実・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・に到って、この作者の核心を画すテーマの曲線は充実した力を失っている。「真実一路」の守川義平が、なすべきこととした生きかたの内容は、その主観的な考えかたで、「生命の冠」の有村恒太郎の行為より遙に社会性が尠く、貧弱化した。「真実一路」のこの主人・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫