・・・カタログに記録をつけなかったので、はっきり画題までは言えませんが、「都民」という絵には光線がバラバラで画面のまとまりが悪かったけれど、生活的なおもしろさがありましたし、バリカンで頭を刈っている絵とか、傷病兵をかいた絵など、技術的には幼稚にち・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ だが、この会場に漲る活気と画題のまやかしでない現実性とは、実に興味深いものがある。第一室にある数枚の絵を見ただけで自分は感じた、――日本のプロ美術家はやっぱりうまい! と。 世界の一般プロレタリア芸術運動は、いつでもすでに革命・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
・・・ところが、画題の選択の面では彼女の少女時代からつきまとっている貴族主義、壮美の趣味がつきまといつづけた。「出あい」を描く一方で、マリアは刺客におそわれている「シーザア」やキリストを葬ったばかりの「二人のマリア」の大作を描こうと勢いこんでいる・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・もとより洋画家の内にもこの事に成功した名人は少なくないが、――そうして洋画によって成功した方が結果は偉大であると思うが、――少なくとも日本画家の方がより多くこの種の画題を選むだけ、それだけこのことが困難でないという印象を日本画家に与えている・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・主として画題選択の斬新であるが、時には珍しい形象の取り合わせ、あるいは人の意表にいづるごとき新しい図取りを試みる。しかしこれらの画家を動かしているものは、岡倉覚三氏の時代の自然観、芸術観であって、その手腕の自由巧妙なるにかかわらず、我らの心・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫