・・・「最もおくれた労働者の間にも『活字にのせたい』という本格的情熱――掠奪と圧制の上に築かれた現代の社会秩序全体とのたたかいのこういう萌芽的な形態への情熱が発表している」というレーニンの人間らしい洞察に立って具体的モメントをさがしてゆくと、サー・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・「人に依頼する者と人から掠奪する者のみが所謂風俗習慣を遵守し得る」親愛の情をもって、作者は春桃の生活態度を肯定している。ひとが何と云ったってかまわないし、妙なことを云えば、ねじこんでやればいい、という春桃の頸骨のつよさは、中国独特の肌理のこ・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ところが、アイヌの住んでいた日本へ侵略して来た民族が、字をしまっておいた唐びつを掠奪した。そして、アイヌはこんにち自分の字をもっていないのだ、と。 この伝説は、圧迫を蒙って来た少数民族の嘆きと憤りとを語るばかりだろうか。わたしには、それ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・ けれども、徳川の封建的権力がくずれかかった幕末に、日本中に横行した悪浪人の暴状と、相互的な暗殺、放火、略奪に疲れていた町人、百姓、即ちおとなしい人民階級は、ともかく全国的に統一した政権の確立したことに安心した。士族の町人、百姓に対する・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ 近代国家イギリスを盛立てたエリザベス女皇の時代の社会の文学として、シェークスピアが、古代ギリシャ文学などに女が運命の神と男の掠奪のままに生涯を流転した歴史から出た当時の女が、自分の心情に従ってよくもわるくも動こうとする姿を描いているの・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・彼らの一回の咳は、一日の静養を掠奪する。病舎は硝子戸で金網の外から密閉された。部屋には炭酸瓦斯が溜り出した。再び体温表が乱れて来た。患者の食慾が減り始めた。人々はただぼんやりとして硝子戸の中から空を見上げているだけにすぎなかった。 こう・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫