・・・たとえば矮鶏の尾羽の端が三分五分欠けたら何となる、鶏冠の蜂の二番目三番目が一分二分欠けたら何となる。もう繕いようもどうしようも無い、全く出来損じになる。材料も吟味し、木理も考え、小刀も利味を善くし、力加減も気をつけ、何から何まで十二分に注意・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・ところが、第二番目のハドウ、それは少し山の経験が足りなかったせいもありましょうし、また疲労したせいもありましたろうし、イヤ、むしろ運命のせいと申したいことで、誤って滑って、一番先にいたクロスへぶつかりました。そうすると、雪や氷の蔽っている足・・・ 幸田露伴 「幻談」
・・・二階で二人の弟の顔を見比べ、伜夫婦の顔を見比べた時は、おげんは空しく国へ引返すより外に仕方がないと思った。二番目の弟の口の悪いのも畢竟姉を思ってくれるからではあったろうが、しまいにはおげんの方でも耐えきれなくなって、「そう後家、後家と言って・・・ 島崎藤村 「ある女の生涯」
・・・お島は上り框のところに腰掛けて、二番目の女の児に乳を呑ませていた。「鞠ちゃんは、先刻姉やと一緒に懐古園へ遊びに行って来ました」 とお島は夫に話して、復た乳呑児の顔を眺めた。その児は乳房を押えて飲むほどに成人していた。「俺にもおく・・・ 島崎藤村 「岩石の間」
・・・馬はそれを聞いて、「これはあなたがあの二番目の羽根を拾ったばちです。しかし今度も私がよくして上げましょう。これからすぐに王さまのところへ行って、この前のような船と、同じ人数の水夫と、それからうじ虫と肉とパンと車と革綱を、先のとおりに用意・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・という雑誌については、いろいろと、なつかしく、また噴き出すような思い出が、あるのですけれど、きょうは、なんだか、めんどうくさく、この三番目の兄が、なくなった頃の話をして、それでおわかれ致したく思います。 この兄は、なくなる二、三年まえか・・・ 太宰治 「兄たち」
・・・と二番目の姉さんを小声で呼んで、「お前のところに、モオニングがあったろう。電話をかけて直ぐ持って来させるように。」「いやよ。」言下に拒否した。顔を少し赤くして、くつくつ笑っている。「お留守のあいだは、いやよ。」「なんだ、」小坂氏はち・・・ 太宰治 「佳日」
・・・一番目の同じようなシーンでは観客はまだそこに現われる群集の一人一人の素性について何も知らなかったのであるが、この二度目の同じ場面では一人一人の来歴、またその一人一人がアルベールならびに連れ立った可憐のポーラに対する交渉がちゃんとわかっている・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そのうちにある室で何番目の窓からどの方向を見ると景色がいいという事を教えたのがあった。その時自分はこんな事を云った。「これでは自分で見物するのでなくてベデカの記者に見物させられているようなものだ。」自分は同行者の温順な謙譲な人柄からその人が・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ 六 善ニョムさんが擲りつけた断髪娘は、地主の二番目娘で、二三日前東京から帰っているのだった。それが飼犬と一緒に散歩に出たのを、とっさんに腰がたたないほど、天秤棒で擲られたのだというのだ。 しかし、善ニョムさんは・・・ 徳永直 「麦の芽」
出典:青空文庫