近時世界の耳目を聳動せる仏国ドレフューの大疑獄は軍政が社会人心を腐敗せしむる較著なる例証也。 見よ其裁判の曖昧なる其処分の乱暴なる、其間に起れる流説の奇怪にして醜悪なる、世人をして殆ど仏国の陸軍部内は唯だ悪人と痴漢とを・・・ 幸徳秋水 「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」
・・・ればあるほどに、それを無事に過ごしたあとの長閑さもまた一入でわれわれの想像出来ないものがあるであろうと思いながら、夕刊第二頁をあけると、そこには、教育界の腐敗、校長の涜職事件や東京市会と某会社をめぐる疑獄に関する記事とが満載されている。これ・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・きたるべき選挙に今日の政府は勝算をもっているかもしれない、それだから組閣のはじめに用心深くさまざまの疑獄事件にひっかかりそうな閣僚をさけました。社会党のくされぐあいがあんまりひどかったおかげで吉田内閣にそれよりはましな人のあつまりのような利・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・でこれまで一枚も出していなかった政党新聞の用紙を日刊十万部分もわり取って、野党の機関紙をひどいのは十分の一ばかりに切り下げようとするやりかたは正当でない。検事総長が「友人づきあい」で疑獄事件に顔を出す「法の権威」は、こういう言論の自由抑圧の・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
出典:青空文庫