・・・それにつけても、呪われた運命の子こそ哀れだ……悩ましさと自責の念から、忘れかけていた脊部肋間の神経痛が、また疼きだした。…… こうした生活が、ちょうどまる二カ月も続いているのだった。毎日午後の三四時ごろに起きては十二時近くまで寝床の中で・・・ 葛西善蔵 「死児を産む」
・・・弾丸のあたった腰は、火がついたように疼きほてついていた。「チッ! しようがないね。貴様ら、呉と郭と二人で、それじゃ夜明に出かけろ、今度はうまくやらないと荷物を没収されちゃ、怺えせんぞ!」「ああで」 荷物を積んだ橇は、門から厩の脇・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・文学における政治の優位性という概念規定の非科学的な、したがって非現実的な解釈のしこりの疼きである。民主的な文学の困難さは、微妙な形で中野重治の「五勺の酒」にあらわれている。異った角度からいくつかの問題を示唆して「三度目の世帯」と島尾敏雄の「・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
出典:青空文庫