・・・ 白酒入れたは、ぎやまんに、柳さくらの透模様。さて、お肴には何よけん、あわび、さだえか、かせよけん、と栄螺蛤が唄になり、皿の縁に浮いて出る。白魚よし、小鯛よし、緋の毛氈に肖つかわしいのは柳鰈というのがある。業平蜆、小町蝦、飯鮹も憎からず・・・ 泉鏡花 「雛がたり」
・・・ポートワインとか、白酒とか、甘味のある酒でなければ飲めなかった。「あなたは、義太夫をおすきなの?」「どうして?」「去年の暮に、あなたは小土佐を聞きにいらしてたわね。」「そう。」「あの時、あたしはあなたの傍にいたのよ。あな・・・ 太宰治 「チャンス」
・・・しかしこれほどの用事を帯びて来て、それを二人の娘の母親に話さずにも帰られぬと思って、直談判をして失敗した顛末を、川添のご新造にざっと言っておいて、ギヤマンのコップに注いで出された白酒を飲んで、暇乞いをした。 川添のご新造は仲平贔屓だった・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫