・・・塗り盆に白い砂でこしらえる盆景の感じそのままである。全部がこしらえものである。金粉を振ったのは大きな失敗でこれも展覧会意識の生み出した悪い企図である。 速水御舟の「家」の絵は見つけどころに共鳴する。しかしこれはむしろやはり油絵の題材でな・・・ 寺田寅彦 「昭和二年の二科会と美術院」
・・・ 虫籠、絵団扇、蚊帳、青簾、風鈴、葭簀、燈籠、盆景のような洒々たる器物や装飾品が何処の国に見られよう。平素は余りに単白で色彩の乏しきに苦しむ白木造りの家屋や居室全体も、かえってそのために一種いうべからざる明い軽い快感を起させる。この周囲・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・ どっかから、お歳暮に福寿草と、雪割草の盆景をもって来た。 生れて始めて雪割草を見た。 大変可愛らしい花だ。 弟の「羽根たたき」の、のどやかな音に耳をかたむけながら雑誌の表紙を、やたらに新らしい絵は何だか私に分らないと思って・・・ 宮本百合子 「午後」
出典:青空文庫