・・・千人針というようなものが目新しい街頭風景であった頃は、確かにその気分が親たちの分別から流れ出して、若い男の思慮へ入り、そして、若い女のひとたちの眼のなかにも読みとられる反映となっていたと思う。多くの若い婦人を読者とする雑誌の小説などは、敏感・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・を発表した島木健作氏のそれにつづく獄中生活者を描いた作品は、従来のプロレタリア文学に欠けていた人間描写とインテリゲンツィアの良心を語る、目新しいものとして一般からよろこばれた。これらの作品の題材の特異性、特異性を活かすにふさわしい陰影の濃い・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・『サン』のカメラは、ぬけめなく国内国外の目新しい写真をあさっているわけだが、この福島県のある村の人たちが、結婚式に指紋をとる、という奇習を決定した情景を、いちはやくつたえたのだった。 その写真は、すべての人々に、奇異な印象を与えた。古風・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・何かのはじまりという期待と、同時に見当のつかなさもその顔々にあって、それは、玄関口の敷居や階段につけられた土足のあとの一つ一つがまだ目新しい自立会の生活全体の新しさと、全く調和している。 日向をさけて、建物のひさしの下によって佇みながら・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫