・・・ 私は科学の学生がただいたずらにL軸の上にのみ進む事を戒めたく思うと同時に、また科学教育に従事する権威者があまりにSK面の中にのみ学生を拘束して、L軸の方向に飛翔せんとする翼を盲目的に切断せざらん事を切望するものである。 最後に私は・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・未来に引き延ばしがたきものを引き延ばして無理にあるいは盲目的に利用せんとしたる罪過と見る。 過去はこれらのイズムに因って支配せられたるが故に、これからもまたこのイズムに支配せられざるべからずと臆断して、一短期の過程より得たる輪廓を胸に蔵・・・ 夏目漱石 「イズムの功過」
・・・ 見た眼がいいものを――という気持の出版当事者も悪いが、又装幀を引受けた美術家なるものもあまりに盲目的である。芸術的良心を痲痺させてしまって出版業者に動員されて、てんから恥ない所がありはすまいか、出版当事者美術家ともに大いに良心を覚醒さ・・・ 宮本百合子 「業者と美術家の覚醒を促す」
・・・一つの動きに、その夫婦の生涯の転機がひそめられているようなことがある。盲目的に押しながされてそういうモメントを越したことから夫妻が陥る禍福の渦は、これまで幾千度通俗小説のなかで語られただろう。 この前の欧州大戦は一九一四年八月一日に始ま・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
八月七日の本紙に、伊藤整氏が同氏の作「幽鬼の町」に就て書いた私の月評に反駁した文章を発表された。編輯者は、私からそれに答える文を求めている。生活及文学に対する私の態度を盲目的な偏執又は非芸術的な機械性と云われている点や錯覚・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・で、マヤコフスキーは、労働者青年の中からのソヴェト・エジソンの出現、小市民趣味と盲目的な外国、資本主義国崇拝の排撃、最後に社会主義の勝利、社会主義の「風呂」で、はじめて人間がきれいにされるということを主張した。 メイエルホリドは、この六・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・自分の心が唸りを立てるほどに漲って来る感じ、強烈な、盲目的な感じを、静かに分解し、解剖して、感じの起された原因を探ったり、批評したりすることはとうてい出来ないのである。 そういうことに出会うごとに彼女はどうしようにも仕方のない情けなさと・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・なぜなら、その帝国主義排斥のまとになって殉教した人々は善良かつ悪意のない人々であったからである――彼等は盲目的であったが、そのために善良かつ悪意のなかったことに累を及ぼす筈がない。」そして、バックは「これ等二つのもの――理性と心の声は決して・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・の人間行事は、窮極のところ人間の生物的な種の保存という自然の目的に従ったものであるに過ぎないというところにある。女性は、あらゆる時代を通じてこの「生の力」の盲目的な遂行者で、男性はその自然の目的のために生捕られてしまう。そして本当に自由な人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・日本の女性は盲目的に戦争にかり立てられた自分たちの運命について次第に深刻に理解しています。どういう名目によっても再び日本があわれな戦争の火つけ人となることを拒絶しています。たとえ世界平和の名目においてさえも、平和は平和でなければならないとい・・・ 宮本百合子 「平和を保つため」
出典:青空文庫