・・・、震死しても藤田東湖の如くならば、不自然の死も却って感嘆すべきではない歟、或は道の為めに、或は職の為めに、或は意気の為めに、或は恋愛の為めに、或は忠孝の為めに、彼等は生死を超脱した、彼等は各々生死且つ省みるに足らざる大なる或者を有して居た、・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・ また物理学者は電子や原子の問題の追究に忙しくて、到底日常眼前の現象を省みる暇がないありさまであるから、渦巻の現象が吾人に啓示しつつある問題のほうにふり向く機会がありそうには思われない。しかしたとえば液体の渦の生成や分布や相互作用につい・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・身を思い国を思う者は、深く自ら省みる所なかるべからざるなり。「日本男子論」の一編、その言既に長く、真正面より男子の品行を責めて一毫も仮さず、水も洩らさぬほどに論じ詰めたることなれば、世間無数疵持つ身の男子はあたかも弱点を襲われて遁るるに・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ けれども、飾ない落付いた目で省みると、この読者層の質の推移ということの実際は、昨今急速にその人たちのことから私たちのことにまで拡がって来ているのではなかろうか。作家・評論家はそれぞれ各々の読者をもっている。読者というものをその関係の範・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・だが、それが生活と呼ぶにふさわしい内容を持っているかどうかという点を省みると、そこに知性の問題があるのだと思われる。 生活のなかで試され、鍛えられつつ生活にその力を及ぼしてゆく人間の知性は、普通なものであると同時に各々その人々に属した動・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
出典:青空文庫