・・・例えば先祖から持ち伝えた山を拓いて新らしい果樹園を造ろうとしたようなもので、その策は必ずしも無謀浅慮ではなかったが、ただ短兵急に功を急いで一時に根こそぎ老木を伐採したために不測の洪水を汎濫し、八方からの非難攻撃に包囲されて竟にアタラ九仭の功・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・と短兵急に云った。「ああ。「お目出たいわけだ、 返すもんですかね。返さないにきまってるから川窪さんで、返したらやろうと云ったんでさあね。 馬鹿馬鹿しい、 たった十円で、うまくおっぱらわれて来てさ。「お前み・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・「姉さんはいつでもほんとうに短兵急な方だ、 幾日位行っていらっしゃるの。」「二十日位、せえぜえ。 私だってそう暢気でもないんですよ。」 妹にうけ合ってもらって千世子は安心して家に帰った。そしてすぐ、きよにその事を話した。・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
出典:青空文庫