・・・大勢で車座に坐って茶碗でも石塊でも順々に手渡しして行く。雷の音が次第に急になって最後にドシーンと落雷したときに運拙くその廻送中の品を手に持っていた人が「罰」を受けて何かさせられるのである。 パリに滞在中下宿の人達がある夜集まって遊んでい・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・それが死んだねずみであるか石塊であるかを弁別する事には少なくもその長さの十分一すなわち〇・五ミクロン程度の尺度で測られるような形態の異同を判断することが必要であると思われる。しかるに〇・五ミクロンはもはや黄色光波の波長と同程度で、網膜の細胞・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・人間が山から莫大な石塊を掘りだして、その中から微量な貴金属を採取して、残りのほとんど全質量を放棄しているのを見物して、現在の自分と同じようなことをいっているかもしれない。 こう考えてみると、道楽息子でもやはり学校へやった方がいいように思・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
昭和二年の冬、酉の市へ行った時、山谷堀は既に埋められ、日本堤は丁度取崩しの工事中であった。堤から下りて大音寺前の方へ行く曲輪外の道もまた取広げられていたが、一面に石塊が敷いてあって歩くことができなかった。吉原を通りぬけて鷲神社の境内に・・・ 永井荷風 「里の今昔」
出典:青空文庫