・・・ 兵士たちは、こういう植民地の労働者を殺戮するために使われ、植民地を帝国主義ブルジョアジーに最も都合がいいように確保するために使われ、その結果はどうなるか? その結果は、帝国主義ブルジョアジーが、一日だけ余命を長く保って、労働者農民・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・ 三 帝国主義××は、何等進歩的意義を持っているものではなく、却って、世界の多数の民族を抑圧すると共に、その自国内に於けるプロレタリアをも抑圧して、賃銀労働の制度を確保し拡大せんがために行われるものである。けれども・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・何ひとつ武器を持たぬ繊弱の小禽ながら、自由を確保し、人間界とはまったく別個の小社会を営み、同類相親しみ、欣然日々の貧しい生活を歌い楽しんでいるではないか。思えば、思うほど、犬は不潔だ。犬はいやだ。なんだか自分に似ているところさえあるような気・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・あくまで之を摂取すれば、烏賊の細胞が彼女の肉体の細胞と同化し、柔軟、透明の白色の肌を確保するに到るであろうという、愚かな迷信である。けれども、不愉快なことには、彼女は、その試みに成功したという風聞がある。もう、ここに到っては、なにがなんだか・・・ 太宰治 「女人訓戒」
・・・すると、過去何百年来歌舞伎や講談やの因襲的教条によって確保されて来た立ち回りというものに対する一般観客の内部に自然に進行するところのリズムがまさしくスクリーンの上に躍動するために、それによって観客の心の波は共鳴しつつ高鳴りし、そうして彼らの・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ エゴイストが自由を欲するのは、やはり自分の領域を確保したいからである。そうしてそれは、少なくも学者や芸術家の場合では、やはり精神的の「巣」を営み、精神的の「子供」を生みたいという本能の命令によって自然にそうなるのではないかと思う。そう・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・洋に中央アジアに、また太平洋に成層圏に科学的触手を延ばして一方では世界人類の福利のために貢献すると同時に、他方ではまた他の科学国と対等の力をもって科学的な競技場上に相角逐しなければおそらく一国の存在を確保することは不可能になるであろうと思わ・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・なぜならば、機会ある毎にアジア民族の解放を妨げることしかしてこなかった日本の帝国主義は、こんにちでも決してその根拠と、協力する勢力を失っておらず、現在ではますます日本の民主化とポツダム宣言による平和の確保がおびやかされてきているからです。こ・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・すべての男女は、ドイツやフランスやその他のあらゆる国々の人民とおなじに、世界を動かす強国の権力者たちが、それぞれのそろばん勘定はしばらくおいて、人類のためという見地から聰明に慎重に行動して、世界平和の確保にたいして誠意ある行動をしてほしいと・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・ 平和と建設の生活を確保するために、わたしたちは、どんなに眼界のひろい、世界の実際の事情に通じた人民とならなければならないだろう。日本が地理的に大陸からぐるりを海できりはなされているという偶然の条件を、もうこれ以上人民の歴史の不幸の原因・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
出典:青空文庫