・・・ 民主的な社会生活の確保ということがいわれ、文学の民主性ということが話されるとき、とかく、題材の方へばかり目がくばられる。あるいは、文学をとおして大衆との結合というふうに相対の形態を考える。しかし、作家たちが社会機構の中で保守封建なもの・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ムッソリーニは権力の確保のためにも資源リビヤへの大なる熱中を示している。そして、アフリカへ! 新しいラテン文化の地へ! というスローガンを文化科学の全面に押し出しているのである。 イタリーでは今「脱出の文学」ということが云われているそう・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・だがその同じ世間は、すべての女性を売淫からまもる女子の職場確保のためにたたかう組合の活動に冷淡だし、賃上げに反感をもつし、いつまでたっても元ラク町の姐御誰々と、本人を絶望させるほど封建的な物見だかさを示してもいる。 わたしたちの文化の一・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・それには食べ物が確保されなければならない。安心して寝る家を確保しなければならない。人間らしい気品の保てる経済条件がなければならない。 本当に深く人生を考えて見れば、今の社会に着物一つを問題にしてもやはり決して不可能ではない未来の一つの絵・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・その潮にともに流れてこそ、作家は、新しい文学の真の母胎である大衆生活のうちに自身の進発の足がかりをも確保し得たであったろう。 しかし、現実はこのようではない。作家の多くは、自己と文学との歴史的展開のモメントをとらえきれなかった。その原因・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・あすこには、雪のきらめく山嶺とそこに孤独であってはじめて確保された唯心的で超歴史的な恍惚があります。「運河」「畳」「家」これらは、これらとして独自の断面から、日本の人民の生きかたについてを思わせます。「鉛筆詩抄」にあるどの詩も、その詩として・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・すると、三合配給の公約はしない、現在二合一勺を確保すると云っただけだという答や、「俺は知らんよ」と、まことに鷹揚な首領の返事や「それは落選候補の公約であった」という名回答もありました。 日比谷の放送討論会などの席上では、大変賑やかに・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・日本の民主化は、全くじかに、私たちの人間性の主張と自覚と、人間として生きるよろこびの確保ということに結びついているのである。 地方文化と都会文化との分裂、地方が文化上の搾取に会うことは、民主精神が伸長して、地方における人民自治の実質が高・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・生活の合理化ということも、その根本は、漁村生産方法の合理化と、最低限の生活の確保ということに、漁村の女の関心が向けられなければならないのではなかろうか。漁村の女のひとは、農村の女より時間的なひまは一日のうちに沢山もっているかもしれない。けれ・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・平和を確保し、人民社会を建設し、「人」として最も大きい飛躍をとげる原動力は、青年たちと婦人たちでなければならない。 学生の政治活動が見られるようになり、各種の組合青年部が活溌となって来ているには、抑えることの出来ない必然がある。未来はわ・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
出典:青空文庫