二月十一日の祭日に、日劇のまわりで演じられた数万の群集の大混乱が、何か一つの事件めいた感銘を一般に与えて、あの事から様々の反響――手近に云えばこれまでパン屋のよこにつくられた列もいけないことになったというような影響を示して・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・同じ毛織のショールでもよそゆきのをかぶり、祭日らしい身なりをした女が二人三人とつれ立って、電車を待っている。 枝々に白く雪の凍った並木道の間を電車が走ってくるが、チラチラとアーク燈のつよい光りをあびるごとに、風にはためく赤旗が、美しく目・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・を書いた、ピエール・ロチの筆致は実に細かで敏感で、長崎の蝉の声、夏の祭日の夜の賑い、夜店の通りを花と一緒に人力車に乗って来るお菊の姿の描写などは、日本人では或はああいう風な色彩的な雰囲気では書けないであろう日本的なものを活々と描出している。・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・太古の民族伝説が初めて文学にうつされたときは、その民族にとって驚異の祭日であったにちがいない。 民族文字をもっていないアイヌには、こういう伝説がある。昔、アイヌ族が繁栄していた時代には、アイヌも立派な民族文字をもっていた。ところが、アイ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・次の祭日のとき、主人一家が午睡している隙に、サーシャがこっそりゴーリキイを誘った。「行こう!」 二人は、庭へ出て、家と家との間の露路へ行った。そこにはひどく古い菩提樹が十五六株生えていた。どの樹の幹にも青苔がついていて、枝は黒く枯れ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・政府は、この民主憲法を、世界人民の祭日である五月一日のメーデーに実効を持つようになるのはいやだから、十一月に入ってから、五月一日をさける日どりで発布すると、新聞に発表した。そのときは大した金をかけて、憲法祭をやるという計画も発表している。・・・ 宮本百合子 「メーデーぎらい」
・・・ いまに、メーデーはここでもほんとうの世界労働者の国際的祭日として、それがソヴェトで行われていると同じように行われる時が来るのだ。 それにしてもデモはいつ動き出すんだろうか、わきの労働者に自分はロシア語できいてみた。「あなた方が・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫