・・・今日改正されたような民法は明治三十年の初め、日本が未だ資本主義興隆期に向っていた時代に、ブルジョア民法として福沢諭吉が強く主張していた折に改正されれば、いくらかは社会生活の現実で女性の実際の助力となり得たろう。きょうではあまりおそまきな、結・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・等の筆者達は、福沢諭吉を新時代の大選手として、急テンポに欧化し、資本主義化しなければならなかった当時の日本の社会感情の先達となった。自由民権の云われた時代の作物が、今日なお面白く、或る気魄によって読ませるのは、筆者の全生活がかかる社会的現実・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・主義の合理化、憧憬は、小林氏の心持をもつよく引いていて、この批評家もやっぱり文中に福沢諭吉の少年時代の逸話を引用して、近代の科学は「いつも人間的才能を機械的才能に代置するという危険な作業」を行っていると主張しているのである。 もとより具・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 明治以来の日本の心に伝統となった戦争に勝ったおかげという底流れを、こまかに触れてみれば、そこには日本の人民のひとくちに咎めるにはいじらしい人間的権利への憧れがあった。福沢諭吉が活躍した明治の開化期の、人の上に人のあることなし、人の下に・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・の出た前年日本では明治五年、福沢諭吉が「かたわ娘」という物語でおはぐろをつけたり眉を剃ったりする徳川時代からの女の因習を諷刺した年である。それとこれと、国民が所有する文学発達の層の比較ということも、深く考えられる。 今日の日本の社会・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・を、明治の偉大な啓蒙学者であった福沢諭吉が読んで、「女大学は古来女子社会の宝書と崇められ一般の教育に用いて女子を警しむるのみならず女子が此教に従って萎縮すればするほど男子の為めに便利なるゆえ男子の方が却て女大学の趣意を唱え以て自身の我儘を恣・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・明治の啓蒙は福沢諭吉などの努力と貢献によって、人間の明るく健かな合理を愛する知性に向って、暗い封建とたたかうために指導された。しかしながら、ヨーロッパ風な宗教の重圧とはちがう日本の封建の重しはそのものとしてはなはだ複雑で、その埒からより広い・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・ 一八九九年福沢諭吉が『新女大学』という本を著わした。貝原益軒の「女大学」が封建社会において婦人を家庭奴隷とするために、女奴隷のためのモラルとして書かれたものであることは前に触れた。福沢諭吉は「学問のすゝめ」を見てもわかる通り、明治開化・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫