・・・これらの政府の諸機関は、少なくもその究極の目的においては、昔の祭官や巫術者のそれと共通なものをもっていることは事実である。 昔の為政者の仕事のうちで今日の見地から見て科学的と考えられるものは上記のごとき宗教的色彩あるもののほかにもいろい・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 私は科学の進歩に究極があり、学説に絶対唯一のものが有限な将来に設定されようとは信じ得ないものの一人である。それで無終無限の道程をたどり行く旅人として見た時にプトレミーもコペルニクスもガリレーもニュートンも今のアインシュタインも結局はた・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・題、金米糖の角の発生の問題、金属単晶のすべり面の発生に関する問題また少しちがった方面ではたとえば河流の分岐の様式や、樹木の枝の配布や、アサリ貝の縞模様の発生などのようなきわめて複雑な問題までも、問題の究極の根底に横たわる「形式的原理」には皆・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・この両者は実は合して一つの有機体を構成しているのであって究極的には独立に切り離して考えることのできないものである。人類もあらゆる植物や動物と同様に長い長い歳月の間に自然のふところにはぐくまれてその環境に適応するように育て上げられて来たもので・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・しかしよくよく詮議してみるとやはり貧乏が総ての究極の原因であったという場合もかなり多いようである。紳士と紳士が主義の相違で仲違いをしたというのが、その背後に物質の問題のかくれていることもある。 世の中が妙に騒々しくて、青いX事件があるか・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・と聞いてみたら、やはり究極のところはそうであったのである。 こういう些細なことも昭和俳諧史のどこかのページの端に書き残しておいてもいいと思うので単なる現象記録としてここにしるしておくことにした。 俳諧一串抄に「俳諧はその物その事を全・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・絶対とか窮極の真理とかというものの存在を信じてそれを得ようと努力する人はこの点で第一に科学というものに失望しなければならない。科学者はなんらの弁証なしに吾人と独立な外界の存在を仮定してしまう。ただし必ずしもこれを信じる必要はない、科学者が個・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・然るに十九世紀に入っては、ヨーロッパという一つの歴史的世界に於てドイツとフランスとが対立したが、更に進んで窮極する所、全世界的空間に於て、ドイツとイギリスとの二大勢力が対立するに至った。これが第一次世界大戦の原因である。十九世紀は国家的自覚・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・世界史がかきかわり、日本も世界史的規模で新たになってゆくという現実のよりどころは、文化に即して云えば窮極のところ次の世代の創造の可能力如何にかかっているのが事実である。 携帯口糧のように整理された文化の遺産は、時にとって運ぶに便利であろ・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・ まず根底をなす社会機構が、もっとすべての人民にとって人間的に生きる可能性を与えるようにならない限り、窮極は社会関係の最も綜合的な表現である恋愛や結婚の問題が、人類的な規範で、各人の幸福にまで発展せられないこともまた大多数の人々に、はっ・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
出典:青空文庫