・・・ 工場で男と比べれば三分の一ばかりの殺人的賃銀、十三時間にも亙る労働強化と最悪の条件で男よりひどく搾られるばかりではない。窮迫した農村や失業者の家庭の中で、婦人の負うている重荷は云い尽せぬ。 而も、ブルジョア・地主は処女会や御用雑誌・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・永年の窮迫と不遇から時局によって世間的に一躍し、温泉へ行って忙しい忙しいと小説を書きとばしているというような農民生活の在りようを、農村生活の現実とてらし合せて考えたとき、その作品が、かち得る賞というものについて、人の心は単純にあり得ないのも・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・ われわれは、現在、世界資本主義末期の激化した階級闘争、窮迫した経済事情の裡に生きている。めいめいが一こと二ことに云いつくせない苦痛、憤怒、不安、或は未来の勝利への希望をもって、生き、闘っている。その生活の間に、いろいろ刻みつけられ、忘・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 林は獄中での精力的な読書にもかかわらず、「京都の一族が封建地主的存在としてどのような窮迫した経済状態にあり、新興ブルジョア日本の侵略主義帝国主義的確立のため、この封建的存在自身の経済的必要からいかに狡猾に専制的支配権力として活躍しつつ・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・こういう神秘主義を様々の形にかえてコケおどしの慰霊祭のおかげで、支配者たちは自分の利益のために殺した満蒙出征戦死兵の窮迫した遺族からの反抗をふせいでいるのだ。軍国主義をあふり得るのだ。 イギリスのロッジ博士が戦死した息子からの霊界消息を・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・中流生活者の経済的窮迫は世界的な事実であり、知識階級の男女が自分のうけた教養を活かす余地なく教養の程度としては低い労働にも従わなければならない現実は、日本の婦人の就職率にもあらわれ、専門学校出の淑女より却って女学校、下って高等小学出の娘さん・・・ 宮本百合子 「短い感想」
・・・内職では決して食べてゆけないのに、その内職がなければ一層窮迫する程度の賃銀しか支払わないのが、いまの雇うものと雇われるものとの関係である。内職は賃銀のダンピングであるにかかわらず、子もちの母は、正当な働き場所を見つけにくい。 外国の諸国・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫