・・・第一回の普選に大山さんが立候補した。その時、強力だった農民組合が叩きつぶされた。そのまゝとなっている。 なんにもしない、人間を、一ツの警察から、次の警察へ、次の警察から、又その次の警察へ、盥廻しに拘留して、体重が二貫目も三貫目も減ってし・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・農民から立候補した者は、自分の味方であるが、労働者は、自分たちの利益を考えないものであるように思っている。だから、附近の鉱山から立候補するものがあっても、近くの農民がそれに投票しようとしない。そして却って、地主で立候補した者に買収されたりす・・・ 黒島伝治 「選挙漫談」
・・・実は昨年、県会議員選挙に立候補してお蔭で借金へ毎月可成とられるので閉口。選挙のとき小泉邦録君から五十円送って貰った。これだけでも早くお返ししたいと思い乍ら未だにお返し出来ずにいる始末。五十円位の金が出来ないのは何んとも羞しいがさりとて、その・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ だいたい今まで中学が少な過ぎたために、県で立てたのが二つ、その当時、衆議院議員選挙の猛烈な競争があったが、一人の立候補が、石炭色の巨万の金を投じて、ほとんどありとあらゆる村に中学を寄付したその数が五つ。 こんなわけで、今まで七人も・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
・・・といって立候補しながら議会開会の全期間をつうじてその議場の演壇からもっとも雄弁にうったえることができたのが今日の醜態事件についてであるということは、またブルジョア婦人代議士の悲惨なる境遇をものがたっています。〔一九四八年十二月〕・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・ 江口さんは栃木県で立候補した。新しくなろうとして熱心な村の人々にとって、根気よい産婆役をしているのであった。「しかしね、モラトリアムでいくらかいいかもしれないよ。――この間うちの相場は、二百円だった」「一票が、かい?」「あ・・・ 宮本百合子 「一刻」
・・・そして、意外に多勢の婦人立候補者が当選した。婦人立候補者の四割八分ほどは当選して、二十八歳から六十六歳まで、三十九名の婦人代議士が、新しい明日に向って選び出されたのである。しかも、これらの婦人代議士の中には、それぞれの選挙区で最高点を得た人・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ 立候補に決定して、わずか十日あまりであった大町米子さんが二万五千票をえたことを、私たちはうれしくおもうし、当然ともおもう。大町米子さんこそ十分それにふさわしい婦人である。おくれて立ったのは、本当に残念であったとおもう。数ばかりは多い婦・・・ 宮本百合子 「大町米子さんのこと」
・・・がとりあげられた。立候補した婦人たちは保守的な男女の一票をとり逃すまいとしてどんなに「女はどこまでも女らしく」と強調しただろう。はた目に気の毒なほど強調して「女こそ女の苦しみがわかるのだから」と演説した。そして、当選して、開院式の折、またそ・・・ 宮本百合子 「「女らしさ」とは」
・・・杉浦啓一でした、「この間の選挙のとき獄内で、立候補したひとよ」と○○○さんが教えてくれました。杉浦啓一は力づよい、飾りない言葉で第四年目の三・一五を記念し、ブルジョア・地主のひどい政府が、どんなに党員たちを苦しめるか、死ねがしに扱うか、いや・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
出典:青空文庫