・・・けれども、バクチは千葉県の競馬場でも大騒動して検挙されているし、新宿もそれでさわいだ。五十円の宝くじを買って、百万円あたる、ということはバクチでないだろうか。勤労の所得と云えるかしら。政府が赤字やりくりのために思いついて、先ず五十円券をどっ・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ ――ベガ――……競馬の広告だ。 ――競馬もあるのかい? 行ったか? ――行って凍えて来た。 ――金をかけるのか? ――かける。馬種改良の目的だから、馬は二輪車をつけて走るんだ。 ――お前に競馬のことを聞いたって、も・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・戦争が一般人民にどんな犠牲を与え、しかも戦争物で自分がもうけてますます競馬馬を買うことが出来ても少しも疑問を持たなかった。「世の中とはそういうものさ」と思っていたのであろう。 こういうふうにみてくれば菊池寛が広く読まれたというのは日本の・・・ 宮本百合子 「“慰みの文学”」
・・・ 池の囲りを競馬場に仕たてて春と秋とは馬ばかりではなく、町々の、自転車乗が此処で勝負を決するのが常である。 夏は、若い者共の泳場となり、冬は、諏訪の湖にあこがれる青年が、かなり厚く張る氷を滑るのであった。此等の池の美くしいのも只夏ば・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・だが、このマリアもいかにも貴族の小娘らしく競馬馬を母にねだってそれを買って貰っている。貴族の娘に生れ、そのほかの社会のすがすがしさや活動性を知る機会をもたないマリアは、退屈で消費的な貴族生活の中でともかく何か変化を求めている。社交界へ出たが・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫