・・・的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたものとし、世界観の隅々までをプロレタリアに組織するためには、先ず、文化啓蒙活動をとおしてあらゆる機会に勤労大衆と接触しその一員となることこそ、正しい第一歩であることは明らかであるからである・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・読者が、新聞小説に求めている面白さの本質の問題から云わば制約の第一歩がはじまっていることも、時代風俗的なディテールへの作者の適応性が要求されていることも変りはないであろう。 しかし、今日の文学のありよう、作家のありようとの関係では、新聞・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・エセーニンは、集団農場化の第一歩である農業の機械化にさえ先ず命がけで反対した詩人である。 ソヴェトのプロレタリア文学、農民文学にとって農民の批評が参考になるのは、彼等の批評そのものの中に現れて来ている正当な判断が作家を益するばかりではな・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そして、これは優等生の一人をつくる第一歩であり、優良社員をつくる一つの道であり、けちな面白みのない人間が一人ふやされゆく道どりでもある。 童心のきよらかさとはどういうものだろう。子供はわるいことをする。ひどいこと、すごいこと、そのど・・・ 宮本百合子 「子供の世界」
・・・は、子供が大人の生活に混ってくる道どりやそこでの日常的な労作への結合の必要を暗示している作者の目がある。この作者としてこの「村の月夜」は第一歩の仕事であり、作品の内容も従来のお伽噺とは全く異った現実日常生活からの面白いお話への試みが示されて・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・その困難を切りひらくための具体的な第一歩として、古典の再評価、作家の教養ということが続いて云われはじめた。トルストイ、ドストイェフスキー、特にこれまで日本に十分紹介されていなかったバルザック、スタンダール等の作品は流行となって翻訳、出版され・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 第一歩で、とりちがえて提出された、日本における公私の逆立ちは、戦争が進むにつれ次第に深刻な具体性をもって来た。 例えば、遠い大洋をへだてたあちこちの島々に、守備としてのこされた一団の兵士たちは、どういう経験をしただろう。食糧事情で・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・長座した後の第一歩はいつもながら格別に難渋なので、今朝よりも一きわ悪しざまに前にかがみ、『わしはここにいるよ、わしはここにいるよ。』と繰り返して言って、立ち去った。 そしてかれは伍長に従って行った。 市長は安楽椅子にもたれて・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・あれがあなたの失錯の第一歩でございましたわ。男。なぜですか。貴夫人。お分かりになりませんの。あなたが馬車を雇いに駆け出しておいでになったあとに、わたくしは二分間ひとりでいました。あなたはわたくしに考える余裕をお与えなさいましたのです・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
・・・あたり前の現象として人々が不思議がらない事柄のうちに不思議を見出すのが、法則発見の第一歩なのである。寺田さんは最も日常的な事柄のうちに無限に多くの不思議を見出した。我々は寺田さんの随筆を読むことにより寺田さんの目をもって身辺を見廻すことがで・・・ 和辻哲郎 「寺田寅彦」
出典:青空文庫