・・・やはり栄えた筆頭は芸者に止めをさすのかと呟いた途端に、私は今宮の十銭芸者の話を聯想したが、同時にその話を教えてくれた「ダイス」のマダムのことも想い出された。「ダイス」は清水町にあったスタンド酒場で、大阪の最初の空襲の時焼けてしまったが、「ダ・・・ 織田作之助 「世相」
・・・福田旅館は、たしかにその筆頭に挙げられていたように記憶していた。先刻、港の広場で、だんなと声をかけられ、ちらと提燈を見ると福田と書かれていたので、途端に私も決意したのだ。とにかく、この夷に一泊しようと。「今夜これから直ぐに相川まで行ってしま・・・ 太宰治 「佐渡」
「当世物は尽くし」で「安いもの」を列挙するとしたら、その筆頭にあげられるべきものの一つは陸地測量部の地図、中でも五万分一地形図などであろう。一枚の代価十三銭であるが、その一枚からわれわれが学べば学び得らるる有用な知識は到底金・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・一九三三年の佐野、鍋山の転向を筆頭とする大腐敗の徴候は、一九三二年三月のプロレタリア文化団体への弾圧以後、次第に日和見的な態度として文学団体の中へもあらわれて来ていたことの証拠である。「一連の非プロレタリア的作品」に対する自己批判として・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・政府御用の神学者シェリング等が筆頭となって、考え研究する能力ある人々を追いはらった。カールはこの状況のもとで大学教授を思いすてた。文筆人として「内部の光」を「焔として」表現する決心をした。『ドイツ年誌』への寄稿をはじめた。カールはこの頃、ボ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・これは、吉村隊の惨虐を筆頭として、それに類する数々の軍国主義教育の荒々しさ、殺戮性への抗議として読者の心にアッピールした。平気でバサリとやる馘首も、惨澹たる生存威嚇であるという事実にまで思い及んで。―― ところが、四月号の『中央公論』に・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・ こんどのアメリカ大統領選挙予測では、ギャラップ博士の米国世論調査所を筆頭に、アメリカのほとんどすべての世論調査機関が、失敗した。十一月六日、七日と『東京新聞』にのせられた小山栄三氏の「世論調査の誤差」は世論調査の技術について素人で・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・とよばれる創作方法に対して、林房雄、富田常雄を筆頭とする中間小説の作家たちは、「純文学とか大衆文学とかいう色わけがなくなってしまうのが当然」であるとして、現在自分たちの書いている文学が「大衆の生活にたのしみを与え、豊かにし、また生きてゆく上・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・家庭生活では、先ず米を沢山配給してもらいたい、が筆頭で、燃料・調味料をほしい。物価が安くなってほしい。読みものがほしい。家を建ててほしい。家の中を楽しいところにしたい。そして、母がいればよい、という希望が答えられてあるのをみたとき、私たちの・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・を選んだ」を筆頭として、国際的にも一つの注目すべき反民主的利用の道をひらかれてきた。わたしたちは、明日のよりよい社会のために、書かれているその範囲のことにうそはないという程度の記録文学から、一歩すすんで、それが社会の歴史の諸関係の事実を語っ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫