・・・神輿の運動の変異量と、その質量や舁夫の人数、各人の筋力、体量等との間に或る量的関係を見いだすことは充分可能でありそうに思われる。 今、たとえば、次のような問題があったとする。一年三百六十五日間における日々の甲某百貨店の第X売り場における・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・力という言葉の起原はつまり人間の筋力の感覚から発達して来たものに相違ない。そうしてこの考えを押し拡げて吾人の身辺を囲繞するあらゆる変化を因果をもって律しようという了見から何かその変化の原因となるものを考えたいので、この原因に力という語を転用・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・脆弱であった四肢には次第に充実した筋力が満ち男性は山野を馳け廻って狩もすれば、通路の安全を妨げる大岩も楽々揺がせるようになる。 女性は、いつかふくよかな胸と輝く瞳とを得、素朴な驚異の下に、新たな生命をこの地上に齎して来る。――毛皮を纏い・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫