・・・実にきょうの若い真面目な女性は、精密なプランをもって、経済をやりくり、人生をくみたててゆく努力をしています。女学校を出て専門学校へ進もうという方々は、いわばまだ少女らしさの多い心の一方で、どんなに現実的に、学資のことを考えたでしょう。日本の・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・大河内氏は、日本の女子の天才の一つとしてそれを感歎し、それは改良されている機械の機構と、「その使いかたが単調無味であるように製作されてあるほど精密に加工されるから」「飽きることを知らない農村の女子が農業精神で」その精密加工に成功し「農村の子・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ もう一つ非常に印象をうけたのは、その一冊の終りの方に工場や作業台に向って働いている人々を撮った何枚かの中の一枚で、精密な機械の調べ手入れのようなことでもしているらしい年寄の男の写真である。時計屋が使うような片目の覗き眼鏡にぴったり顔を・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・そして、明日はと全く別なところへ移動させられ、技術は只迅いとか仕上げが奇麗とかいうところでだけ評価され、決してそのひとがより精密な高度なトレーサアとして成熟してゆくような機会はなく、こきつかわれる。給料は勿論やすい。やすいからこそ女があらゆ・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・個人の歴史は社会の歴史とどのように織交りあっているものであるか、そして又芸術を知ろうとすればその当時の社会の有様を基礎としなければ、本当のことは何も分らないものであるということを、歴史家である著者は、精密に、しかも胸に訴える生ける姿として、・・・ 宮本百合子 「現代の心をこめて」
・・・ 精密な、そして情愛にみちた一つの仕事がここに提示されていると思う。これは、とくにこの戦争以来、私たちの精神をいためつづけてきた暴力によってつくられた、われわれの内部的な抗議の自意識へ固執する癖、という複雑な社会史的コムプレックスをとり・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・かしこまってそこに連っている歌人・文学者たち一人一人の経歴が文学史的に細叙されているにつけ、つつしんでいる作者の描写が精密であればあるほど、そこにゴーゴリ風のあじわいが湧いて、読者は、全情景、登場人物などのすべてが、自分たちと同じ人間として・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・大いに堂々と云われている結論なり断定なりが、十分精密強固な客観的事実の綜合の結果として、そう云われざるを得ないものであったことを文章のなかで自然と納得させて行く、という魅力、説得力を欠いている。文筆上の軍需景気とユーモアをもってゴシップに現・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・その危難にあったことが精密ではないが、薄々は忍藻にも聞えたので、さアそれが忍藻の心配の種になり、母親をつかまえて欝ぎ出すのでそこで前のとおり母親もそれを諭して励ましていた。「門前の小僧は習わぬ経を誦む」鍛冶屋の嫁は次第に鉄の産地を知る。・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・水野精一君たちの精密な実地踏査が始まったのもそのころで、その成果『雲岡石窟』十五巻の刊行が終わったのは、つい数年前のことである。これで雲岡遣蹟の紹介の仕事は完成したといってよいが、しかしそれは伊東博士が撮影して来られてから、半世紀たってのこ・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫